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トピックス

効率的市場仮説

 効率的市場仮説(EMH:Efficient Market Hypothesis)は、金融市場に到着した情報は、迅速かつ完全に価格に反映されるとされる理論である。ある時点の資産価格は、その時の利用可能なすべての情報が含まれるため、情報がその後の価格変化に影響を与えないという。ここの議論対象とする情報は、価格情報等の罫線情報、公開されている財務や非財務の情報、インサイダー情報等に分類される。価格情報等の効率的消化を仮定するのは、弱い(ウィーク)市場効率仮説、インサイダー情報の効率的消化を仮定するのは、強い(ストロング)市場効率仮説という。ここでは、価格情報等の効率的消化に関する弱い市場効率仮説を対象にする。

 効率的市場仮説が成立する場合、情報が瞬時に消化され、価格に正確に反映するため、その後の価格変化には影響を与えない。すなわち、過去の情報やその結果である価格変動を分析しても、将来の価格変動の予想に貢献しない。効率的市場仮説は、チャート分析やテクニカル分析を否定するものでもある。

 効率的市場仮説が成立しない場合、例えば、情報消化は、過小反応プロセスあるいは過大反応プロセスに従うと考えられる。過小反応プロセスでは、情報に対して価格の瞬間的変化が過小で、その後時間をかけて情報を消化していく、そのため、リターンの時系列上にプラスの自己相関が存在する。一方、過大反応プロセスでは、情報に対して価格の最初の瞬間的反応が過剰で、その後時間をかけて過剰分を修正する。このとき、リターンの時系列上にマイナスの自己相関が存在する。

予測可能性とノイズ

予測可能性

 予測可能性とは、データや現象において再現性のあるパターンや規則性が存在し、それを利用して将来をある程度的確に予測できる状態を指す。例えば、小売業の売上には季節性があり、夏や冬のセール期に売上が伸びる。また、金融市場においては、選挙の前に株価が上昇する等の規則性が観察される。

 予測は、データの中に含まれる将来の変動の前兆となる「シグナル(signal)」を見つけ出すことである。通常データにノイズも多く含まれる。ノイズは、シグナルと関係のない予測できない変動やばらつきである。ノイズは、シグナルを覆い隠すので、予測の邪魔をする。

 一方、効率的市場仮説は、株価には既に公開されている情報を織り込んでいるため、過去の情報を利用して将来の価格変動を予測することはできないとする。この立場から見ると、株価の短期的な変動は本質的にノイズと同じ性質を持つ。つまり、規則性を持たず、偶然的かつランダムな変動である。これらは、投資家の心理や外部ショックによって生じる偶然性の表れで、前兆などは存在しない。

 効率的市場かどうかという検証は、データがノイズ的かどうかの検証でもある。

ノイズの色

 数学にはフーリエ変換という理論がある。すべての変動(関数)を(複数の)波に分解することができるという理論である。これらの波には高い周波数のものもあれば低い周波数のものもある。例えば、人の声はいろいろな周波数の音から構成され、それぞれの周波数の強さ(パワー)は、人の声の性質を決める。一般的に男性は低い周波数の成分が強く、女性は高い音の成分が強い。

 ノイズもいろいろな周波数の波に分解できる。代表的なノイズには、「ホワイトノイズ」がある。日本語では「白色雑音」と訳され、昔のアナログテレビでの砂嵐や、ラジオで無信号時に聞こえる「ザーッ」という音はホワイトノイズの代表例である。ホワイトノイズは最もでたらめなノイズで、予測できないものである。

 ピンクノイズ(桃色雑音)は、周波数が高くなるほどパワーが減衰するノイズ、人間の耳の感度に近い性質を持っている。そのため、音響測定やリスニングルームの調整など、実用的な場面でよく用いられる。雨音や風の音などの自然界の音もこのピンクノイズに近い。ピンクノイズは不快感がなく、どちらかと言えば、気持ちを落ち着かせるものである。ピンクノイズよりもさらに高周波が減衰するのは、ブラウンノイズ(褐色雑音)、波の音や深い雷鳴のような低く重たい音になる。

動画:ノイズのカラーについて

What's the Difference Between White Noise, Pink Noise, and Brown Noise?

 高周波成分にエネルギーが集中するノイズは、ブルーノイズ(青色雑音)やバイオレットノイズ(紫色雑音)がある。ブルーノイズは高い音(高周波数)が強調されるシャープで鋭い音、バイオレットノイズは通常不快を感じるほど高周波がさらに強い。

 時系列上、ワイトノイズは全く予測できないが、ブラウンノイズやピンクノイズは低周波成分が相対的に強く、時系列上大きな波が存在することになる。この大きな波は、将来予測に役立つため、ワイトノイズに比べ、ピンクノイズやブラウンノイズはいくらか予測しやすい、と言えよう。

 音やノイズの周波数成分の強度の分布を確認する手段には、スペクトル分析という方法がある。スペクトル分析の数学的原理はフーリエ変換である。実用的なアルゴリズムが多く開発され、音や株価変動のデータからその周波数成分の分布を割り出す。

 ノイズは通常予測ができないとされているが、厳密的にホワイトノイズは100%予測できないが、その他のノイズはいくらか予測可能である。

 株式や為替等の金融資産の価格変化はホワイトノイズとされる。耳で聞くことができれば、ザーと聞こえることであろう。1)なぜ価格変動はワイトノイズなのか、2)そもそも価格変動は本当にホワイトノイズなのか、3)ホワイトノイズではないなら、少し予測できるのではないか、等の面白い問題はある。スペクトル分析を利用すれば、金融市場の変動の本質的理解に役立ち、売買アルゴリズムの整理と発見にも貢献するかと思う。これはこのシリーズの目標でもある。

過小・過大反応とARMAモデル

過小プロセスと過大反応プロセス

 過小反応プロセスとは、投資家が情報に対する最初の反応は過小で、時間をかけて情報を消化するプロセスである。下の図の①は、効率的市場仮説で仮定する反応プロセスである。情報が市場に到達した瞬間に価格に織り込まれる。②は過小反応プロセスのイメージである。価格上昇情報が価格にもたらす反応は、少しずつの上昇で、時間をかけて、新しい均衡価格(〇印)が実現される。価格下落情報への反応は、少しずつの価格下落になる。

 過大反応プロセスでは、投資家が情報に対する最初の反応は過剰で、その後、過剰反応分を時間をかけて修正するプロセスである。図の③は過大反応プロセスのイメージである。価格上昇情報が価格にもたらす反応は、最初オーバーシュート、その後時間をかけて、新しい均衡価格(〇印)になる。価格下落情報への反応は、少しずつの価格下落になる。

 過小反応プロセスにおいて、異なる日の価格変動に同じ情報が影響していることになる。すなわち、時系列にプラスの自己相関が存在する。この自己相関の検出は、過小反応プロセスの存在の証明になるが、自己相関は通常検出されず、効率的市場の証明になってしまうことが多い。

ARMAモデル

 回帰モデル的に書くと、過小反応プロセスの場合、

 効率的市場仮説が成立する場合、情報が瞬時に消化され、価格に正確に反映するため、その後の価格変化には影響を与えない。すなわち、過去の情報やその結果である価格変動を分析しても、将来の価格変動の予想に貢献しない。効率的市場仮説は、チャート分析やテクニカル分析を否定するものでもある。

 効率的市場仮説が成立しない場合、例えば、情報消化は、過小反応プロセスあるいは過大反応プロセスに従うと考えられる。過小反応プロセスでは、情報に対して価格の瞬間的変化が過小で、その後時間をかけて情報を消化していく、そのため、リターンの時系列上にプラスの自己相関が存在する。一方、過大反応プロセスでは、情報に対して価格の最初の瞬間的反応が過剰で、その後時間をかけて過剰分を修正する。このとき、リターンの時系列上にマイナスの自己相関が存在する。

資料

株式のリターンのパワースペクトル

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