覇王茶姫
「覇王別姫」は、楚の覇王・項羽が愛妾と別れを告げる最後の場面を描いた有名な歴史故事。その名をもじった「覇王茶姫(Bawang Chagee)」は、中国発のミルクティーブランド。名称からは勇壮な印象を受けるが、実際は健康志向のお茶飲料を提供するチェーン店である。伝統文化とモダンなデザインを融合させたスタイルは、若年層の間に人気がある。中国国内でおよそ6,500店舗を展開しており、海外にも進出し、「東洋のスターバックス」とも称される。海外のブランド名はCHAGEE「茶姫」。
|ブランドのHPより
ナスダック上場
4月17日、「茶姫」の持株会社である茶姫控股(Chagee Holdings)が米国ナスダック市場に上場した。初日の取引では株価が16%上昇し、時価総額は約59億ドル(約8,300億円)に達した。米中関係が関税問題などで激しく対立し、金融市場への影響が懸念される中、上場成功は一筋の光であろう。
米国の証券取引所に上場している中国企業の株式は、中概株(China Concept Stocks)と呼ばれる。たとえばアリババ(NYSE)、拼多多(ナスダック)など、中国のニューエコノミーを代表する企業の多くが米国に上場している。米中対立の激化により、これら中概株の上場廃止の可能性も議論されている。中概株全体の時価総額は一兆ドル弱の規模にのぼり、上場廃止が現実となれば、その影響は計り知れない。
金融市場の力?
米国の金融市場は、トランプ大統領の味方をしていないようである。相互関税の発表後、株価は大きく下落。その後、90日間の一時停止措置を受けて一旦は回復したものの、4月21日にはトランプ大統領とFRBパウエル議長との対立が表面化し、株安・債券安・ドル安の「トリプル安」に見舞われた。
J.P.モルガン・チェースのCEOは、「米国は、繁栄・法治・経済力・軍事力を背景に投資の安定地としての地位を築いてきたが、いまその地位が脅かされつつある」と警鐘を鳴らしている。
関税政策の結果や製造業回帰などは、実現するとしてもかなり先の話であるうえ、不確実性はかなり大きい。一方、金融市場での同様による損失は「今すぐ」「確実に」発生する。この視点からみれば、金融市場が、大統領に対してブレーキをかけ得る、数少ない制約力の1つといえるだろう。