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<<  開花の公式  

  桜の季節がやってきました。
  桜は美しい、一面に広がる満開の風景も桜吹雪も、どの瞬間も絵になります。

  桜によく似た花として梅と桃があります。 桃や紅梅は赤みが強く、淡いピンク色の桜とは比較的見分けやすいのですが、白い梅や薄い色の桃の花となると、区別が少し難しくなるかと思います。

  花びらの形に注目すると、見分ける手がかりになるようです。 梅の花びらは丸い形、桜のは先端が少し割れた形、桃のは尖った形をしています。

 桜・梅・桃を見分け方(ウェーザーニュース)

 気象情報やニュースで「開花予想日」が発表されるなど、桜開花日の予想が春の話題の1つです。実は、開花日を計算する公式があるのです。気象庁によると、簡便法とDTS法というのがあります。簡便法には600度法則と400度法則があります。

600度法則

 2月1日からの毎日の最高気温を足していき、その累積気温が600度に達した日が開花日になる、というシンプルなものです。極端の例えになりますが、2月1日から最高気温20度の日が30日間続けば、3月初めに累積気温が600度に達し、開花する。

400度法則

 600度法則と同じ仕組みですが、2月1日からの日平均気温を積み重ね、400度を越えた日を開花日とする方法です。なお、日平均気温は、(最高気温+最低気温)/2 で求めます。

 

 これらの法則を使えば、簡単に開花日を予測することができます。もちろん、結果の誤差はあります。400度法則より600度法則の方が精度が高く、誤差が小さいです。観光やイベントの企画を考えると、できるだけ正確な予測をしたいですね。気象庁が使用している精度高い手法は、DTS(温度変換日数)モデルといいます。

 DTS法

 DTS法(温度変換日数モデル)は、日々の平均気温(絶対温度)tをもとに、以下の数式を使ってDST日数を計算し、それを累積して開花に必要な「日数」を算出する方法です。

DTS日数 = exp ( 9.5×1000×(𝑡−288.2)/( 𝑡×288.2))

 

 このDTS日数を起算日から積算していき、設定された閾値(しきい値)を超えた日を開花日とします。積算を始める日(起算日)や閾値は地域ごとに異なります。たとえば:

 ・青森市:起算日=1月26日、閾値=22.9日

 ・八戸市:起算日=1月17日、閾値=24.8日

となります。起算日と閾値は過去の開花データをもとに統計的に導き出されたものです。地域対応するパラメータ(係数)が2つ含まれるため、精度が高いはずです。実際の誤差分布をみますと、DTS法は600度法則に比べ、誤差が約半分になる(下のグラフ)。400度法則の誤差のグラフは載せていませんが、DST法の数倍になります。

|青森の開花日予測の誤差比較(気象庁)


 

 実際の気温とDTS値の対応関係を計算してみると、下のグラフの青い線になります。なお、グラフの横軸は対象日の平均気温(摂氏)、縦軸はDTS日数です


|気温とDTSの関係

 グラフからは、気温が上がるほどDTSの値が増加する非線形の関係があります。温暖な日ほど開花に向けた「進み具合」が加速するということです。

 DTS法は、指数関数を用いるため、直感的に理解しにくいかと思います。ここで、以下のような温度ベースのカウント式を考えてみます。

 カウントモデルでは、例えば12℃を基準とし、次のようにカウントします。

1)  12℃以下の場合は、1日を 0.5日 とカウント

2)  12℃を超えると、

カウントに数=0.5+(摂氏温度-12)*1.3/8

 

 1つの式にまとめると、0.5+max(温度-12,0)*1.3/8になります。この式と対応するのは、はこれは、グラフ上の赤い折り線になります。気温が高いほど桜の開花が早まるという直感にフィットし、指数関数も使いませんでした。

 

 桜の気持ちは分かりませんが、花芽が冬の休眠から目覚め、適切な時期に開花したいとする本能的なしくみがあるのは確かです。この本能は、指数関数を使っているのか、カウント式を使っているのでしょうか。

桜は一瞬の気温変化にすぐ反応せず、確かな積算によって開花を決めることは、進化の結果であり、自然が持つ「知恵」とも言えるでしょう。このメカニズムは、他の分野にも応用できると思います。たとえば、株式チャートのテクニカル分析では、さまざまな指標が使われていますが、「開花モデル」のようなモデルはあまり見かけません。

もしかすると、開花メカニズムをヒントにした新しい投資モデルが作れるかもしれません。桜のおかげで百万長者になるのもいい夢ですね。。


追記

ちなみに、天候デリバティブには、Cooling Degree Day(CDD)という指標があります。対象期間において、例えば基準温度18℃とし、日々平均気温が基準温度 を上回る日の場合、その差を積算する値です。このCDDは、上記のカウントモデルと同じメカニズムです。CDDは、冷房費用の電気代に比例するので、この指標を使って、冷房費用の予想と変動を管理することは可能です。

CDDと同じように、Heating Degree Day(HDD)は、対象期間において、日々平均気温が基準温度 を下回るの場合、その差(絶対値)を積算する値です。HDDは、暖房費用の電気代に比例する。

©明治大学データアナリティックス研究所

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